お知らせ

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2020年2月22日土曜日

放哉か 山頭火か ノラ猫か?

NHK文化センター京都で、自由律俳句に関する講座が、2020年3月28日に行われます。

作家の嵐山光三郎氏が放哉・山頭火を語ります。
また、後半は青穂の小山代表と自由律俳句の選評を。

詳細は、ここをクリック

チラシも載せておきますので、
興味のある方はどうぞ。画像をクリックすると拡大します。



2020年2月16日日曜日

尾崎放哉賞、選考進む!

皆様からお預かりした貴重な作品群、その重みに選考スタッフ一同、つぶれそうです。
とにかく多くのご応募、感謝!です。感謝!感謝!!の言葉しかありません。
選句にあたって、何度も何度も読み返しています。一句ごとに、(作者名は伏せて選句しますので選句の時はどなたの句かわかりません)作者の句作のシーンが思い浮かんで、そしてまた、ああ、いい表現だな、これは類句がなかったかな、放哉のこの句の雰囲気に似てるな、などなど、止まってしまうことも多く、なかなか進みません。
出句は最大のご支援であり、みなさま、自由律俳句、もしくは尾崎放哉を愛する同志と思っています。生半可な気持ちで選句してはなりません。
そして今日もまた、深夜にペンを持ったまま、崩れ去るように力尽きるように、眠りにつくのでした。

(文:黒崎渓水)



2020年2月11日火曜日




青穂35号が発行されました
画像は、表紙、青穂抄(中村友乙選)、巣山鳴雨色紙。

ほか、

同人作品
私の感銘句
一句鑑賞
青穂の窓(吉多紀彦選)
「青穂第一句集互選互評③④」
句会報
追悼 浜松の俳人 錦織祥山

エッセイ・評論に
奥野立日十「二〇一八 きやらぼく」鑑賞
久坂夕爾「詩はどこにあるのか②」
福田和宏「私と西遊記」
きむらけんじ「きまぐれ写俳日記31」

※敬称略
 自由律俳句誌「青穂」は、次号より季刊となります。
 次の発行は五月を予定しています。

(文:久坂夕爾)

2020年2月8日土曜日

山家鳥虫歌(近世諸国民謡集)より

校注 浅野建二


九 こなた思へば千里も一里 逢はず戻れば一里が千里

相愛する男女の恋情を訴えたもの。元来、『李白詩集』巻六や、蘇東坡の「近ク別レテ容(かたち)ヲ改メズ、遠ク別レテ涕(なみだ)胸ヲ霑(うるお)ス、咫尺(しせき)相見ザレバ実ニ千里ト同ジ」の詩情に関連を有するもので、「禅林句集」や「天草版金句集」「日葡辞書」などにも散見する「咫尺千里」という成句が一般に流布するうちに、庶民的な恋愛歌謡に化したものと思われる。中世・近世の諸歌謡から現代歌謡に至るまで、きわめて累計歌の多い一首。

四九 蝶よ胡蝶よ菜の葉にとまれ とまりゃ名がたつ浮名たつ

上句は江戸初期の流行小歌か。西山宗因の句に「世の中よ蝶々とまれかくもあれ」。また明治「小学唱歌集」の「蝶々蝶々 菜の葉にとまれ 菜の葉に飽いたら 桜にとまれ」は、幕末・明治期の国学者、野村秋足(あきたり)の作と伝う。「止まる」「泊る」掛詞で、「とまりゃ」は「一夜共に寝ると」の意。上句と下句の掛け合い。

五一 君は八千代にいはふね神の あらぬかぎりは朽ちもせん

七八 こなた百までわしゃ九十九まで 髪に白髪の生ゆるまで

一三七 勤めしょうとも子守はいやよ お主(しゅ)にゃ叱られ子にゃせがまれて 間に無き名を立てらるる

種彦本、「志摩」五首の内の最後に掲げる。前出の一三三番(伊勢)に同じく七七七七・七五形で各地に多い子守娘のつらさをのべたもの。「無き名」は無実の評判。いわゆる「子守くどき」の一種。例えば岐阜地方の子守唄「千両くれても守奉公いやじゃ、親にゃ叱られ子にせめられて、人に楽じゃと思われて、何が楽じゃな夜昼追んで、朝は七つ(午前四時)に起こされて」、三重県員弁(いなべ)郡子守唄「お主に叱られ、子に責められて、どこで立つとやら、わしが身は」など。

一六三 都まさりの浅草上野 花の春風音冴える

一首は。京都の賑わいにもまさる江戸の浅草や上野の花見風景。そよぐ春風の音まで澄み切った感じという。芭蕉の名句「花の雲鐘は上野か浅草か」の発想を踏まえた、江戸の新民謡調ともいうべきか。


人情、リズム、機知の勝った言葉遊び、世俗的教訓、祝い唄。
(九)のように、言葉が独り歩きして形骸化してしまったようなものから、(一三七)のような、非常にストレートで逆に新鮮に見える心情まで。

私などは、現代の流行歌、ポピュラーソングと基本的に変わらない印象を受けるのですが、どうでしょうか。
スマップの歌に、「ナンバーワンにならなくてもいい。もともと特別なオンリーワン」という歌詞がありましたが、ふと思い浮かべ、ここに並べても違和感がないな、と思いました。現代風で小綺麗ですが、機知が勝っているところなどは。


そのほか、いくつか興味をひかれたことを。

本書は、自序にこう記されているようです。
(前略)世の風俗として、花に啼く鶯、水に住む蛙の声いずれか哥(うた)を詠まざらんと古事に有るよしして、山家鳥虫歌(さんかちょうちゅうか)と名付けて、(後略)
。。。。どこかで読んだことのある文章です。
もうひとつ。
集中、一番多いのが、七七七五形(いわゆる小唄調)で78%。次が七五七五形(今様?私には不勉強でよくわかりませんが)。次が、五七五七五形。
七音が先行していることが多いのは、やはりというか、面白い事実です。

(文:久坂夕爾)


2020年1月12日日曜日

ノニ・ラサガ展


青穂34号に小山代表の「ノニ・ラサガ展」に関する記事が載りました。
残念ながら、この展覧会自体は終わってしまったようなのですが、
スペインのアーティスト・ノニラサガ氏による、
尾崎放哉の俳句に登場する漢字に触発された、
「カリカンジグラマス」という独自の表現による展覧会。
小山代表がオープニングにて講演を行っています。

下記は、TOKYO ART BEATの記事
https://www.tokyoartbeat.com/event/2019/9E9E


(文:久坂)

2019年12月8日日曜日

青穂34号が発行されました


青穂34号が発行されました

画像は、表紙、村尾草樹色紙、青穂抄(ちばつゆこ選)。

ほか、

同人作品
私の感銘句
一句鑑賞
青穂の窓(佐瀬広隆選)
「青穂第一句集互選互評②」
句会報

エッセイ・評論に
久次縮酔「樹林の釣り カワハギ編」
三好利幸「花野抄・第17号を味わう」
黒崎渓水「鑑賞 自由律俳句集「挿話」」
きむらけんじ「きまぐれ写俳日記30」

※敬称略

(文:久坂夕爾)

2019年11月24日日曜日

自由律を動かせ

第3回尾崎放哉賞募集中‼
今週末が締切となります。(11月30日必着)

今年から、大賞のほか春陽堂賞も新設されました。
応募は2句1組で何組でも可。高校生は2句まで無料です。
まだの方、迷っている方も、これから出しても間に合います。

山頭火とは違った魅力を持つ放哉の名を冠する賞です。
ぜひ応募してみてください。

応募要項はここをクリック

自由律句のひろば資料




藤田踏青氏より貴重な資料をいただきました。
「自由律句のひろば」機関紙(上)および
「現代自由律100人句集」(下)

「自由律句のひろば」は、数年前まで存在した自由律俳句の超結社的集団。
(こういうことに興味がない&人付き合いがあまりない)私にとっては、
いつの間にかなくなってしまった集団、くらいにしか
認識していませんでした。Webサイトは時折ながめたりはしていたのですが。

どんな方が現代の自由律俳句の作者として名を連ねているのか、
「現代自由律100人句集」(第Ⅲ集)(2016年発行)より挙げてみます。

もちろん、この会に参加していなかった方もたくさんいるでしょう。
ネットや地域のイベントなどで個人で活動している方、
自由律系の結社に所属することを嫌って活動している方、
短歌・自由詩とジャンルをまたいで活動している方など。
あたり前ですが、そのなかにも、たぶん優れた書き手はいる、ということを前提として。

(地域別・北から)
畠働猫
太田和孝
加藤邪呑
吉本知裕
前田和子
野田麻由可
黒瀬文子
寺田和可
小山榮康
小山智庸
白松いちろう
荒木勉
いまきいれ尚夫
黒崎渓水
棚橋麗未
中島かよ
中塚唯人
平岡久美子
伊藤完吾
田中耕司
野谷真治
泉沢英子
埋田貞子
大軒妙子
久保田奈々弥
小池ますみ
鈴木憲
鈴木和枝
田中陽
ちばつゆこ
富田彌生
中村友乙
那須田康之
松尾尚子
渡野邊寿美子
田辺雅之
宮地祥子
𠮷田敷江
吉原陽子
正木土易
秋生ゆき
小山貴子
藤田踏青
高村昌慶
幾代良枝
後谷五十鈴
田中昭雄
三好利幸
ゆきいちご
陽蔭野無一
阿部美恵子
石竹和歌子
植田鬼灯
内田麻里
小野芳乃
佐伯初枝
佐々木研信
島田茶々
清水八重子
下瀬美保子
竹内朋子
田中里美
富永鳩山
富永順子
橋村美智子
原田智美
久光良一
部屋慈音
増田壽惠子
松尾貴史
松永眞弓
松永友世志
山本節子
和崎治人
今石咲子
荻島架人
楠本尚子
重富佐代子
高木架京
中村みやこ
馬場古戸暢
檜幽可
増田眞寿子
松養榮貞
藤岡徹
徳永純二

※発行当時に物故だった方を除いています。
※敬称略

藤田踏青さん、ありがとうございました。

(文:久坂夕爾)

2019年11月16日土曜日

栗林一石路句抄


そこの土まもるべく木実芽生えけり
死ぬ日近きに弟よ銭のこと言えり
二階から足がおりてくる寒い顔になる
シャツ雑草にぶっかけておく
なにもかも月もひん曲ってけつかる
娘よひきあげろ働いた金だぞふんだくってでも来(こ)うよ
街のどてっ腹を掘りぬいて君たち唄いながら出てくる
やすい蚕がずんずんふとる夫婦で飯
目刺のような兵隊が生きていたラッパが鳴りだした
北海道へ樺太へからだだけはもって船底にごろ寝
生きて通夜の蚊をたたく縁側の草
死顔の母の枕辺を起(た)ちさて人寄せの事
かかる世に百姓酔えばののしる性をすてず
調書で罪になってゆく蝉が鳴いている
墜ちくる天ささえがたしや独房に
雨の若葉に食わせろの旗へばりつく
どれにも日本が正しくて夕刊がぱたぱたたたまれていく
どっと笑いしがわれには病める母ありけり
子ども自分の耳がある笑う
お話にならぬ蚕がしんしん桑を食う部屋じゅう
鉄をたたいて人間が空のどこかにいる
大きな弁当をさげて地突女がかたまってくる


栗林一石路は長野県青木村出身。
「プロレタリア俳句」とも言われていますが、そういうキャッチフレーズはあまり私は好みません。感傷に流されず、現実を社会を人間を見つめた俳句でしょう。
橋本夢道とともに荻原井泉水主宰の「層雲」を離れたのですが、「層雲」が、たとえて言えば私小説・心境小説のような傾向なのに対し、そこには収まりきらない句群であることは確かなようです。

「調書で罪になってゆく」では、石原吉郎(詩人)のシベリア抑留時のロシアによる罪状認否のくだりを、「地突女」では「ヨイトマケの唄」を、「墜ちくる天ささえがたし」では石牟礼道子の句集「泣きなが原」を連想したりしました。
現代でも、入管施設での非道や、ひとり親の貧困や、強情ともいえるナショナリズムや差別、チェーン店ばかり跋扈する資本の集中など、現実は昔とそうそう変わっていないようにも思えます。そこにスポットを当てて書く方が現れてもおかしくはないですね。


2019年11月4日月曜日

エドワードゴーリーの優雅な秘密


連休を利用して、
東京都練馬区立美術館へ。
「エドワードゴーリーの優雅な秘密」展。






不気味でシュールで少しユーモラスな絵本作家。
と思っていたのですが、
イラストも数多く手がけていた方のようです。

「題名のない本」は、左に木、右に家の窓(なかに子供)という固定の背景
の真ん中で、いろんな生き物が
飛んだり跳ねたり変な声だしたりしている、という絵本で、
一番好きな絵本。

「ひぴてぃ うぃぴてぃ、」
「おくしぼりっく;」
「しっぷ、」
「さっぷ、」
「すー。」

知らない人は、何のことがさっぱりわからないでしょうけれど(笑)。

面白かった点のひとつは、
(残酷だったりナンセンスだったりするので、でしょうか)
「大人向けの絵本」で売り出そうとした編集者に対し
「子供にもわかる」「編集者がビビッている」とゴーリーが回想していた点。

日本にも「はれときどきぶた」というナンセンス絵本ありました。
こどもこそ、こういうものを喜びますよね。
「意味」を求めてしかつめらしく通俗的なものばかり求めるのは大人のほうだと、
ときどき思うことがあります。


そのあと、
神保町の古本まつりへ。
なんて良いタイミングで開催しているのか。

「読む時間なんてあるのか?」という脳内のツッコミを無視して、
数冊買いました。
(いつものことですが)

買ったのは、
尾崎翠「第七官界彷徨」
「山家鳥虫歌 近世諸国民謡」
近藤洋太「詩の戦後 宋左近/辻井喬/粟津則雄」
など。

詩、短歌、俳句をあまりジャンル分けに固執せずに
書いてある論評はつい読みたくなりますね。

(文:久坂夕爾)

2019年10月14日月曜日



青穂33号が発行されました

画像は、表紙、青穂抄(田畑剛選)。

ほか、

同人作品
私の感銘句
一句鑑賞
青穂の窓(平山礼子選)
「青穂第一句集互選互評①」
句会報
第3回尾崎放哉賞作品募集案内

エッセイに
小山貴子「放哉を訪ねて 長春その2」
きむらけんじ「きまぐれ写俳日記29」

※敬称略

(文:久坂夕爾)

2019年9月27日金曜日

自由律記事紹介


古い記事なのでご存じの方もいると思いますが、
リンク貼っておきます。


ブログ俳諧鑑賞
 荻原井泉水周辺
 住宅顕信
 尾崎放哉
 種田山頭火
 橋本夢道

(文:久坂夕爾)

高柳篤子作品集





陽があたまるとさびしがる耳
香から蠅ひそと飛ぶ言葉あり
机の下にもぐり込み全身の肌目にむらがる戀
海つてすごいやわたしより青いや
秋だから太陽までズボンをはいて来る
猫の尻尾は 鉛筆けずり 野原でまわせ 野原でまわせ
ラリルレの接吻 ラリルレの水 ぐさりと杉の葉の影が来る
どうすればいいは紫だ ごめんなさいも紫だ
赤いピストルほしいよ・赤いピストルほしいよ
※作品集より抜粋

青山五丁目の戦災住宅を朝五時起きで渋谷まで走り、ハチ公前に並ぶヤミの牛乳やさんへ。病気の姉のために一本か二本買わなければ、と。なのに、その朝は牛乳やさんがいなくて、牛乳やさんのところに大きな唐草模様の風呂敷をひろげ、ガリ版刷りのペッチャンコの雑誌を売っている二人のおじさんがいました。橋本夢道というおじさんと、石田波郷というすさまじい切れ味のおじさん。二人のおじさんの前にずっと立っている私以外誰もいません。お姉さんの牛乳がなければ、もう死にそうな状態でした。それなのにお母さんが毎朝私にくれる牛乳代を全部、橋本夢道さんの雑誌を買ってしまったのです。お母さんやお姉さんに、どういうふうにあやまろうかと心配を抱きおじさんたちの二冊の本をだき、家にかえりました。
※高柳篤子(広岡まり)の書信抜粋

高柳篤子作品集 編/岩片仁次 夢幻航海文庫 より


寄贈、ありがとうございました。
これは自由律俳句ですね。面白いです。
「肌目にむらがる戀」などは妙に切迫感があります。
書信の抜粋、こういう何気ないエピソードの中にいる故人は、
どうしてなつかしく慕わしげに思えるのでしょう。
本の中でしか知らない人なのに。そんなことを考えていました。

橋本夢道は富沢赤黄男の「詩歌殿」にも参加していましたね。
この俳誌はものすごいラインアップだったはず。
と、思って調べてみたら、関西俳句協会の記事にありました。

「詩歌殿」創刊号 青木亮人


(文:久坂夕爾)


2019年9月8日日曜日

青穂32号が発行されています





青穂32号が発行されています。
(お知らせが1ケ月遅れてしまいました。すみません。)

順に、表紙、青穂抄、第6回青穂大会入賞句

ほか、
第2回尾崎放哉賞表彰式写真
第6回「青穂」全国大会写真
同人作品
私の感銘句
一句鑑賞
青穂の窓(黒崎渓水)
句会報
全国大会報告
エッセイに
小山貴子「放哉を訪ねて 長春その1」
 きむらけんじ「きまぐれ写俳日記28」

※第2回尾崎放哉賞が決定しています!
 結果についてはこちらをご覧ください

入賞句のなかで私が印象に残った句は
・そこから何かがはじまる穴ひとつ掘る 久光良一
・赤い靴買うここは反撃のまち     小笠原玉虫

※敬称略

(文:久坂夕爾)

同人の句(青穂2019年8月号より)

(前半)
ひとり一句ずつ紹介

冬にプールに貌を映す           伊藤風々
十四回目の春にいて亡き子よ私は幸せです  おおひさ悦子
新緑の淵底の両眼             松岡月虹舎
心の傷痕癒えることなく石楠花の小径    後谷五十鈴
ゆっくりあるくうす紅色のみち       渡辺敏正
終業、しずかに蒸発する          無一
スマホに導かれ国東半島ひとまわり     渡辺敬子
ひとときはあの日の君と曼殊沙華      高橋恒良
今日もやっと演じ終えた生きるという荒業  久光良一
庭にあじさい植えて帰りたい鎌倉      南家歌也子
橡の花りっとらっとるっとれっといっと栗鼠 伊藤清雄
ガガガの背後その背後そのまた背後     久坂夕爾
春の気配がノックする真夜中の秒針     埋田貞子
行間に漂う恋文の不協和音         いまきいれ尚夫
今や画だけの夢二の女たち         佐瀬広隆
わけもなく笑えた日の海はない       重富佐代子
手と手で確かめあう無音の景色       楽遊原
覚悟も心許ない老々介護梅雨に入る     中村友乙
予定表の旅先だけは太字である       弓削酔魚
掴んだ浮きはルアーだった         ゆきいちご
前髪かき上げ予定のない朝         大軒妙子
ぬるりと出る夏の月            田畑剛
ねじれるかぎあなありふれた女のふあん   三好利幸
連れてってと子犬の目           ちばつゆこ
一人欠けたよ誰も気付かない        久次縮酔
青菜と届いた蝶がまい出る         小池ますみ
予期せぬ風に吹かれて宙返り        田中昭雄

(文:久坂夕爾)