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2019年1月29日火曜日

飯島翠壺洞句抄

昭和50年代に数年間だけ、
自由律俳句誌「層雲」に登場し亡くなった飯島翠壺洞

長野県長野市で、別名にて評論誌に参画していたことくらいしか
足跡をたどれませんでした。
山頭火が出発点ながら、
その影響を脱した句の暗い象徴性、幻想風景は印象的です。

こういう自由律俳句が(もっと)あってもいいと思うのですが。


美しいけもの罠に陥ち枯野雪ふる
月夜の海がけものの骨あらっている
鬼面つければ暗い湖底の音が聞こえる
塚累々ひとの墓うまの墓ちょうの墓
空の静けさがもう夜を溜めはじめた
私の内なる丘の上の春露に蒼き鹿立てり
春の夜の原野にひとり鳴る警報機

甲虫仰向けに落ちて軋む山の深緑
氷水の赤い唾吐きまた炎天を歩き出す
海峡を渡る鷹の一瞥雑魚とる舟に投げた
貧しい酒場を出ると瓦礫の迷路だった
駅裏の屋並が星の植民地になっている
どの石も虫の声ある石
疲れ果てて魚臭い町に着いた
物干しに蛸寒々と揺れている薬局
薄幸なやつが逝った安らぎに似た悲しみ

※昭和50年代の「層雲」よりピックアップ

(文:久坂夕爾)