近頃は長針と短針に足を挟まれます
緞帳ストン首は闇に陳列される
あと一塗りの空から鳥がすり抜けた
ほたる仮縫いの夜をほどく
笑っている人の顔で笑っている
耳穴から溢れる砂時計の波音
映る花にとまり蝶は鏡で飼われる
ハサミが入り薔薇は女の匂いを放つ
なみなみと注がれ舞蝶がすけてくる
井戸の底に落した影が澄んでいる
風ねむれぬ夜は放火魔と通じあい
小鳥を数え終えて密林消えた
蟻が地平線を持ちあげてゆく花野
風がくるくるむけて月がまぶしい
ガラス片の霧雨に人魚とすれちがう
桃が闇を引いて転がり落ちる
金魚ゆらゆら花のひらく匂いがする
月は何色にぬっても嘘になる
絵の具がかわくまで生きていた蝶
夜店の人魚に値札がついている
高田弄山(たかだ・ろうざん)(1956-2013)の句に接しての私の印象は、「不穏で生命力の薄い静寂」。そして、表現力がある作家性の強い作風。絵画もたしなんでいたように見えます。
句については、下記京都泉の会のブログから抄出・引用させていただきました。ありがとうございます。問題があるようでしたら、お知らせください。
この泉の会のブログには、かなりの数の自由律俳人の句抄もあり(野村朱燐洞の句抄もありました。)、ここ数年精力的に更新されていますので読みでがあります。
ぜひ、訪問してみてください。右側スレッドにリンクも貼りました。
(文:久坂夕爾)