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2018年11月10日土曜日
青穂第一句集(後半)
青穂第一句集より(後半)
あの角を曲がった赤い傘はうちの孫 塩地キミヱ
古布を並べて虹色の海へ迷いこむ 重富佐代子
他人のごとくふとん畳んで帰って行く 島田茶々
本当は口説かれるまでが好きなだけ 杉森久美子
餅ついてまず牛に食わした 鈴木しのぶ
五人でやってる草野球もう夕暮れだよ 鈴木憲
沈黙の口の中にも砂粒入る そねだゆ
雪の夜みえない人がしんしんと来る 高木架京
でも可愛い妻だ眼鏡拭いてくれる 高鳥城山
顔がお面になって夕涼み 高橋恒良
寺巡る旅路の果ての遠霞 高村昌慶
何の石なるか路傍の石 田中昭雄
うたたねの夢を覗く退屈な雲 谷田越子
爪切って音が冬 田畑剛
キャベツの芯です女です ちばつゆこ
誉めてもらいたくて笑ってみる 中川昌子
今はただ暦の絵に音重ねている遠花火 中村友乙
両手につかんだイチゴで思案の子ども 西川大布団
讃美歌ひびく病院のクリスマス 錦織祥山
静かに村が老いてゆく 橋本登紀子
船が来るまで踊っていよう 久次縮酔
わたしを支える狂気あり今日も生きぬく 久光良一
八月十五日身の内で鳴るサイレン 平岡久美子
師走のショットバーでカラシニコフの話など 平山礼子
縁談のように明るいプリンがある 本間とろ
雨音の溜まる浮かれ横丁 松岡月虹舎
玩具落ちる児は机をかじる 水越雅人
ソフトファシズムひたひたとイチゴパフェ 三好利幸
壁の染みになりきってこうもり 無一
寂しさ降るそこなしの空 ゆきいちご
薬のむためだけのミルクあたためる 弓削酔魚
石の匂いをかぐ私はここにいます 𠮷田數江
遠く誕生日をしている子の灯り 吉多紀彦
手を摩りながら目の会話病室を出る 渡辺敬子
風の駅蟹の赤さぶら下げて 渡辺敏正
(文:久坂)
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