身近過ぎて難しい。ステレオタイプになりやすい、甘くなりやすい
少年・少女・男・女・親・子・孫
という題材で、最新の「青穂」から無作為に作品をひろってみました。
春に亡き子の影はなし おおひさ悦子
同じ作者には、私が好きな句「十二年も同じ顔の子を見て飽きない」があります。
今回は『不在』(観念)を表現していますが、「十二年~」の句は『在』(行為)を表現しており、逆に作者の(子の不在を思う)情動がありありと見えてくる様に個人的には思えるのです。ここを読んでいる方々はどう感じるでしょうか。
バス停に立っているまだ母の顔 鈴木しのぶ
男湯と女湯だけの暖簾が揺れる 楽遊原
頬被りの女人形焼きを売る 伊藤風々
おとぎ話丸めながら親子の毛糸玉 いまきいれ尚夫
わきまえない女たちに日脚伸びている 平山礼子
少女るり蝶さがす青春のうなり ゆきいちご
象の祖母象の母象のわたしアカシアの花のした 久坂夕爾
女子高生のラブレターきて水男子湧く 奥野立日十
女の体を淡く浮かせて狼となる 久次縮酔
夜が怖くて起きてきた子 伊坂恵美子
胸の底貴女の影がかしこまる 秋生ゆき
女に生まれたくなかったの鏡に春寒し 小山幸子
私の鼓動この子の鼓動合わさる布団の中 ちばつゆこ
振鈴朗朗と七五三への思いの新たなる 小池ますみ
コロナ禍で安否気遣う遠方の息子 渡辺敬子
朝焼けの消えぬまに息子の弁当盛付けて 加藤武
自らを語らず青年そこはかとわらう 幾代良枝
ランドセルにジャンパー着せて三寒四温 河野初恵
激昂する男の夢で覚めたがまた寝る 小山貴子
子と孫は遠く離れて独居の薬の数 渡辺敏正
蟹座のおばあちゃんはたぶんお人好し 南家歌也子
公園や孫の手を引き今引かる 高橋恒良
道すがら満月指して尋ねる児 西川大布団
(文:久坂夕爾)
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