夜が淋しくて誰かが笑いはじめた
念仏の白い息している
ずぶぬれて犬ころ
水音、冬が来ている
夕焼けに顔のないわが子をさがす
月明り、青い咳する
子につんぼといわれていたのか
深夜の細い針が血管を探している
酔った月が出ている
かあちゃんが言えて母のない子よ
うつむいて歩く街に影がない
水滴のひとつひとつが笑っている顔だ
若さとはこんなにも淋しい春なのか
耳を病んで音のない青空続く
坐ることができて昼の雨となる
降りはじめた雨が夜の心音
夜の点滴にうつすまがった月だ
映画「ずぶぬれて犬ころ」パンフレット掲載の全句集より転載
映画「ずぶぬれて犬ころ」、渋谷ユーロスペースで見てきました。
顕信のドキュメンタリーと、顕信にあこがれる少年の逸話を織り交ぜて。
いじめの描写は少し類型的な気もしますし、
少年サイドの物語や演技には個人的に違和感もあります。
ただ、情感に訴えるタイプの映画にはなっていないのは好感を持ちました。
(文:久坂夕爾)
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